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ストレッチとラジオ体操、特異性の原理

1.登山家・スキーヤーの三浦豪太さんが毎週土曜日の日経新聞夕刊に「探検学校」というエッセイを書かれており、私のブログでも何度か紹介したことがあります。  8月25日のタイトルは『体操とビル登り』です。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①夏山シーズンになって、注目している体操がある。  登山の運動生理学の権威である鹿屋体育大学の山本正嘉教授が考えた、登山のための「山登りずむ」体操だ。  

②軽快なリズムに乗りながら登山をデフォルメした動きをこなす体操で、3分くらい続けると軽く汗ばむ。  最初はラジオ体操のつもりで面白半分にやっていたが、しっかりやると意外に難しい。

③片足でバランスをとりながら上半身を動かす。  リズムの変化や大きな動きがある。  ストレッチをしながら、体のバランスを保つポジションが求められる。  1つの動きに必ず複数の要素が絡むのだ。

④2カ月前に体力測定のため父の三浦雄一郎と僕が鹿屋体育大を訪れた際、「山登りずむ」について山本先生にいろいろと尋ねてみた。  先生がこの体操を考案するにあたって着目したのが、デュアルタスクと呼ばれる複数の動きを組み合わせた複雑な運動。  これによって、実践的な運動神経系を活性化することができるという。

⑤一般に、準備運動と称してひろく行われている筋肉を伸ばすことだけを目的としたストレッチは、けがの防止にほとんど役に立たないことがいくつかの研究から明らかになっている。  それよりも筋肉を動かし、血流の流れをよくし、筋肉をつかさどる神経を活性化するほうがよほど効果があるという。  

⑥「山登りずむ」はもちろん、従来の朝のラジオ体操も、単なるストレッチと比べてよほど実践的な準備運動だといえる。』

④の「デュアルタスクと呼ばれる複数の動きを組み合わせた複雑な運動。  これによって、実践的な運動神経系を活性化することができるという。」は私も意拳などの稽古を通して実感しています。

また、⑥の「従来の朝のラジオ体操も、単なるストレッチと比べてよほど実践的な準備運動だといえる。」には驚きました。  

トレーニング理論も日進月歩なので勉強しつづけなければなりませんね。

ちなみに、「山登りずむ」体操は「登山体操 山登りずむ」で検索すると動画を見ることができます。  参考にして下さい。


2.同じく9月8日のタイトルは『特異性の原理』です。  抜粋し、番号を付けて紹介します。
 
『(1)①(前略)僕はこの3カ月間、トライアスロンレース「HAYAMAN」に出場する息子のトレーニングにもつき合った。  9日に葉山で開催されるこのレースは、逗子の大人も子供も参加する地域の一大イベントだ。  

②水泳、パドルボード(サーフボードを両手でこぐ)、ランで構成されている。  走るだけなら伴走したり教えたりできても、泳ぎやパドルは僕の専門外。  

③その不足は、息子の通っている「トビウオクラブ」のコーチがほかの子供たちとの合同練習のなかで補ってくれた。  一緒に練習してみると、水泳と慣れないパドルで息が上がったあとに走るのは思ったより辛い。


(2)①トレーニングには過負荷、特異性、可逆性の3原理というものがある。  

②普段の身体活動よりもきつい負荷を加えなければ効果を得られない。  これが過負荷の原理である。

③トレーニングはその種類によって効果が異なり、鍛えた部位や動作にのみ効果があらわれる。  これが特異性の原理。

④トレーニングで得た効果はトレーニングをやめると失われる。  これが可逆性の原理。  


(3)①今回、僕は2つ目の「特異性」を強く実感した。

②水泳、パドル、長距離走はすべて登山と同じ持久系の運動だが、いずれも体力があればこなせるというものではなく、それぞれに特異性がある。  使う筋肉、技術、何よりも考え方に違いがあり、一筋縄ではいかない。  

③マラソンが速くても、高所登山ではゆっくり登るお年寄りに追い越される。  山では機敏に動ける僕が、泳ぎでは小学生に抜かれてしまう。  

④登山のために他のスポーツで鍛えるのもいいが、山に強くなるには小さな山でも登り続けることだ。  それが無理なら、荷物を持ってビルの階段を上り下りすることをお勧めする。』

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速筋と遅筋 その2

7月9日のブログのタイトルは『速筋と遅筋』でした。  今回は『背すじは伸ばすな!』(山下久明著 光文社新書)から『速筋と遅筋』について抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①筋肉の凝りや痛みは、筋肉を休めれば回復しますが、休んでもらっては困る筋肉もあります。  それが内臓筋です。  例えば、心臓や肺を動かす筋肉がそれにあたります。  (中略)

②一方、手足を動かす筋肉は、運動神経の支配を受けていますので、あなたの意志で動かすことができます。  これを骨格筋といいます。

③肺を動かす筋肉も自律神経がコントロールしている内臓筋ですが、こちらは意志によって動かすことができます。  たとえば「深呼吸をしよう」と思えば、いつでもできますよね。  肺は内臓筋でありながら骨格筋としての性格も併せ持っているので、運動神経からのコントロールが効くのです。

④このように、内臓筋と骨格筋の両方の性格を持つ筋肉が体には存在していて、姿勢を支える筋肉もそうしたたぐいの筋肉なのです。

⑤内臓筋が凝って硬くなるようでは困ります。  まさに生死に関わりますから、凝りが戻るまで休ませるわけにもいきません。  ですから、何としても疲れにくい筋肉にする必要があります。

⑥では、どうすればよいのでしょう。  一つには血流を良くしておいて、(凝りの原因となる)乳酸をどんどん洗い流すという手が考えられます。  たとえば心臓の筋肉なら、常に血液が出入りしているので、それが可能かもしれません。  

⑦でも、最初から乳酸の生成を抑えられるなら、それに越したことはありません。  乳酸は、糖類(主にブドウ糖)から手っ取り早くエネルギーを取り出すときに出てくる副産物ですが、脂肪酸からエネルギーを取り出せば、乳酸はできません。

⑧脂肪酸とは要するに脂肪のことで、体は余ったエネルギーを細胞の中に脂肪酸として蓄えています。  この脂肪酸を利用している筋肉は、乳酸が発生して凝って硬くなってしまうことがありません。  ただし、脂肪酸からエネルギーを取り出すには時間がかかりますので、早い動きに対応できないのです。  こうした筋肉を遅筋と呼んでいます。

⑨一方、糖類をエネルギー源として素早い動きができる筋肉を速筋と呼んでいます。

⑩遅筋と速筋は、それぞれ独立して存在しているわけではありません。  特別な筋肉を除けば、一つの筋肉の中に遅筋と速筋が混ざりあっているのです。  内臓筋には遅筋が多いほうが有利ですが、手足を動かす筋肉には、速筋が多いほうが速い動きに対応できますので有利です。  

⑪この遅筋と速筋の配合比率は、筋肉によって最初から異なり、それぞれの使用目的もあらかじめ想定されていることになります。  そのため、間違った筋肉を姿勢維持のために使うようなことをすれば、筋肉痛や凝りが起きても不思議はないのです。』

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速筋と遅筋

『百歳まで歩く』(田中尚喜著 幻冬舎文庫)を読みました。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①筋肉の性質で瞬発力のある筋肉が「速筋」で、持久力がある筋肉を「遅筋」として分けます。  速筋は、非常にすばやく収縮することができる瞬発力のある、太くて大きな筋肉で、疲れやすい特徴があります。  速筋は内部に糖質を含んでいるので、酸素が送り込まれなくても糖質を分解して収縮など筋肉としてのリアクションを起こすことができるのです。  そのために乳酸がたまりやすくて疲れやすく、筋肉痛の原因にもなりやすいわけです。  (中略)  また鍛えることで筋肉もりもりの隆起した筋肉になるのも、この速筋のほうです。

②反対に遅筋は、ゆっくりと収縮する小さな筋肉。  筋肉痛を起こしにくく、疲れにくいのが遅筋です。  それでも、ゆっくり収縮する遅筋に瞬発力がまったくないわけではなく、速筋に比べると瞬発力が劣るというだけなのです。

③そして「座る、立つ、歩く」といった日常動作に必要な筋肉は、速筋より遅筋が中心になります。  逆の言い方をすると、人が活動する上で速筋のような疲れやすい筋肉が多いと都合が悪いでしょう。  日常的な動作ですぐに疲れてしまわないように、「座る、立つ、歩く」に使う筋肉は、最初から遅筋が多くなっています。

④そのほかにも、遅筋は小ささを補うために、筋肉を構成する1本1本の筋繊維が特殊な形状をしていたり、遅筋の部分は速筋より筋繊維の量が多い構成になっています。  その結果、遅筋は速筋に比べて柔軟性があるので、遅筋を中心に使うトレーニングやスポーツはケガもしにくいのです。  (中略)

⑤私が、〝スポーツと遅筋〟の関係で注目しているのが相撲です。  相撲の練習では、昔からシコと鉄砲です。  なかでも柱に向かってゆっくり押し出す鉄砲が、遅筋を鍛えます。  しかし、近年の相撲部屋では、従来のシコと鉄砲を重視した練習より、トレーニングマシーンを使った練習が多く行われるようになりました。  

⑥その結果、遅筋よりも速筋が鍛えられることになりました。  で、最近の取り組みは瞬発力のある相撲が中心になり、持久力のある相撲が少なくなった。  がっぷり組み合ったまま水入りになるような、見ごたえのある相撲はなかなか見られないなあ・・・、というのが私の感想です。

⑦また、昔に比べると、力士がケガで休場することが多くなりました。  このことにも、遅筋を鍛えることが疎かになっていることが関係していると、理学療法士の立場からは推測しているのですが・・・。  繰り返しますが、すばやく力強く収縮し、柔軟性において劣る速筋、その速筋を中心に鍛えているとケガもしやすいのです。

⑧困ったことに、中年になってスポーツジムで筋トレを始めた人に膝を痛める、腰を悪くするなどの故障が多発していますが、これはマシーンを使ったトレーニングなど速筋だけを集中的に鍛えた結果です。  (中略)  さらに、遅筋を鍛えることは、速筋を鍛えるより脂肪が燃焼しやすいというメリットもあるのです。  中年太り対策という点でも遅筋を鍛えることはベストでしょう。  (中略)

⑨例えば腹筋でも、若い人たちはピストンのような速い運動ですが、中高年ではゆっくり起き上がりゆっくり下ろす腹筋運動のほうがはるかに効果的です。  速いスピードのトレーニングでは大きな筋肉だけが動くことになります。  速筋を中心に鍛えることになるので、同じ内容のトレーニングでも疲れやすく、筋肉痛やケガの原因にもなります。

⑩また、ゆっくりだと、大きな筋肉だけでなく内側の小さな筋肉も動くことになり、中高年に必要な遅筋を鍛えることもなります。  どんな内容の筋力トレーニングでも、中年以降は、個々の動きをできるだけゆっくりと行うほうが有効です。  (中略)

⑪大臀筋(お尻)は遅筋の割合が多いことで知られており、ヒラメ筋(ふくらはぎの裏)は実にその8割が遅筋で構成されています。  (中略)  ハムストリングス(ももの裏)は遅筋よりも疲れる筋肉の速筋の割合が高く、歩行のスピードを上げるときや、走るときなどによく使われます。  (中略)

⑫歩き方が悪いと、本来は遅筋(大臀筋やヒラメ筋)を中心に使って歩くところを、速筋(ハムストリングス)を中心に使って歩くことになります。  そうなると、同じ距離、同じ時間を歩いても、膝を伸ばして背中をまっすぐにした正しい姿勢で歩いている人より疲れます。  (中略)

⑬大股で膝を曲げ、背中を丸めて(ハムストリングスを中心に使って)歩く姿勢は、中高年以降から始まりやすい歩行時の姿勢なので、中高年の段階で悪い姿勢の歩行を改善することが、将来的に歩行距離を長く維持できるかどうかのポイントになるでしょう。』

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