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男時、女時

1. 昨日紹介した 『 秘花 』 ( 瀬戸内寂聴著、新潮社刊 ) の中で、父の観阿弥(かんあみ)が世阿弥(ぜあみ)に話した言葉が、次のように書かれています。

2. 「 この世の時には男時(おどき)と女時(めどき)があるのだ。  

 男時はすべてが勢いづく上向きの時、女時とはその反対の、すべての勢いが衰え、不如意(ふにょい)になる時だ。  

 女時の最中(さなか)に焦ってはならぬ。  自然の勢いには逆らえぬ。  そういう時こそ、じっとわが心を抱きしめて耐えていることだ。  ふたたびめぐってくる男時の訪れを辛抱強く待つのだ。 」

3. 「 確かなことは、何者か、人外(じんがい)の大きなものの意志によって、この世に送り出され、それもまた自分の意志ではなく、この世に生かされているに過ぎぬ。  

 平凡な人生をたどろうが、善きにつけ、悪しきにつけ、非凡な世渡りをしようが、すべては持って生まれた己が運命に依(よ)る。  

 男時の栄えに驕(おご)らず、女時の悲運にくじけることなく、己が本分を切に尽くすことだけだ。 」

4. 男時、女時とは世阿弥が書いた 『 風姿花伝(ふうしかでん) 』 に出てくる言葉です。  

5. 大辞林を引いてみました。

 男時・・・運の向いているとき。

 女時・・・運の向いていないとき。  衰運のとき。

6. 今日の朝刊に、 「 数年前に業績が絶好調だったA社の今期の業績は最悪。 」 という記事が出ていました。

 人生って、いい時ばかりじゃないですね。  でも、だからこそ面白いのかもしれません。

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