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ルール改定と第33回ウェイト制大会

6月4・5日は大阪で第33回ウェイト制大会及び女子・高校生の全日本大会でした。  今大会より、改定された新ルールが適用されました。  新ルールに関する解説と、出場した9人の結果・感想を簡単に書いてみたいと思います。

1.新ルールについて
①現在発売中の『ワールド空手』5月号に、新ルールに関する松井館長と私のインタビューが載っていますので、詳しくはそちらを読んでいただくとして、ここではポイントだけ書きます。

②ルール改定の最大の狙いは「華麗なる組手」「格調高い空手」の実現です。  極真ルールは、老若男女が同じルールで試合できるという意味では、きわめて安全性の高いルールだと思います。  また、そのために危険な要素を排除してきました。  顔面殴打・掴んでからの膝蹴りなどです。

③顔面を殴られない・掴まれないことから、近年生じた現象は、本来間合いを取って戦うべき打撃系格闘技の本質、から外れた膠着(お互いに胴体を密着)した戦いです。  そんな試合を観た場合、プロボクサーなら「あの間合いなら、すぐ顔面を叩ける」、柔道選手なら「あの間合いなら、すぐ投げれる」と思うはずです。 

④他の格闘技選手からも評価されるような戦いになるために、ルールによって膠着状態がなくなるように規制してきましたが、残念ながらいまだ改善されませんでした。

⑤また、これから格闘技をやってみたいと考えている人が、そんな膠着状態で戦う、実戦を無視した組手を習ってみたいと思うでしょうか。

⑥他の格闘技選手からも評価されるような、これから格闘技をやってみようとする人を魅了するような「華麗なる組手」「格調高い空手」の実現が望まれます。  そういった意味で、昨日の重量級決勝の鎌田翔平と高橋佑汰選手との試合は、私の理想に近かったように思います。


2.昨日の大会の出場選手について

①山添麗王奈(全日本高校生15歳男子-65㎏級)・・・1回戦で、優勝した大國谷選手に本戦判定負け。  相手の63㎏に対し53㎏と軽量で、その差が出たように感じました。

②伊藤雅哉(軽量級)・・・1回戦で櫻田選手に上段を蹴られ、一本負け。  筋力・運動能力・心肺能力は高いので、残りの足りない部分は、試合で勝つ経験を積む中で埋められていくと思います。  地方大会等での入賞・優勝経験がまず必要ですね。

③亘和孝(軽量級ベスト8)・・・相手は3度目の対戦となる清水選手でしたが、顔面殴打を含む減点1で本戦判定負けです。  新ルールの中で今後どう戦ったら、自分の良さを発揮できるか真剣に考える必要があると思います。

④加賀健弘(中量級第4位)・・・3回戦で、再延長まで8分間、接近して相手の正面に立ち、相手と突き・下段廻し蹴りで打ち合う組手をしました。  その試合は勝ちましたが、そのダメージもあり、4回戦では下段を効かされました。  トーナメントでトップに立つためには、なるべくダメージを残さずに勝ち上がることが重要です。  そのためには、「間合いをとって相手の攻撃をかわす」「同じ打ち合うのでもフットワークを使って自分は相手の側面に立つ」などを考えるべきでしょう。  要は「相手に打たせずに、自分だけが打つ」ことです。  森善十朗に匹敵する素質を持ちながら残念です。

⑤竹岡拓哉(軽重量級準優勝)・・・恋之介との決勝は減点1による判定負けです。  竹岡も接近戦主体の組手です。  もし、その組み手を続けていく(それもあり、だと思います)なら、徹底的にウェイトトレーニング(特にスクワット)に励んで、かっての黒澤浩樹(第16回全日本チャンピオン)のように相手を倒せる下段廻し蹴りを身につけるという考え方もあります。  2回戦で足掛け下段突きの技有りを取りました。  足掛けの技術を磨いて、足掛けの名手を目指すという考え方もあります。

⑥石崎恋之介(軽重量級優勝)・・・朝練を見ていて、スタミナ・パワーが昨年までとは違っていました。  高校3年生で第30回ウェイト制大会に準優勝して以来、試合で結果が残せませんでしたが、やっと全日本と名の付くタイトルを取りました。  まだ20歳と若いのですから、新ルールのもとで、自分はどんな組み手を目指し、どんな稽古を積んでいくのかを、今回の優勝を機に、もう一度練り直す必要があります。

⑦桑瀬隼弥(軽重量級ベスト8)・・・まだ本人は自覚していないかもしれませんが、体格・柔軟性・パワー・運動神経のどれをとっても潜在的な可能性をものすごく感じます。  初日の試合を見た松井館長も絶賛していました。  でも、実際に全日本チャンピオンや世界チャンピオンになれるかどうかは、今後の本人次第です。  大いに期待しています。

⑧ルモアンヌ・ファビアン(重量級)・・・1回戦でゴデルジ・カパナーゼ選手(第10回世界大会第3位)に本戦判定負けです。  カパナーゼ選手相手に、あきらめずに最期まで食い下がり、善戦しました。  ファブは柔道経験者ですから、相手の蹴りを捌いてからの足掛け下段突きを研究したらいいと思います。  実際、カパナーゼ選手が次の2回戦で、追い込んでいた山川竜馬選手から足掛け下段突きの技ありを取られています。

⑨鎌田翔平(重量級優勝)・・・第31回大会に次ぐ2度目の優勝です。  蹴りのうまい高橋佑汰選手から「左内廻し蹴りからの残心」で技有りを取りました。  新ルールは翔平に合っているのでは、と予想していましたが、まさにその通りでした。  今後は、新ルールの牽引車となるような大活躍を期待します。  また、毎週1回付ききりで翔平を指導してくれた、池田祥規(城南目黒中央支部長)には、とても感謝しています。


3.1983年・第15回全日本大会の大西靖人・小笠原和彦戦、1984年・第1回ウェイト制大会・軽量級の大賀雅裕・中江辰美戦、1992年・第9回ウェイト制大会・中量級の川本英児・青木英憲戦、2012年・第29回ウェイト制大会・軽重量級の小林大起・鎌田翔平戦に次ぐ5度目の決勝戦・同門対決でした。

また、1992年・第9回ウェイト制大会・中量級の川本英児・重量級の田村悦宏、第29回ウェイト制大会中量級の森善十朗・軽重量級の小林大起以来、3度目のウェイト制大会2階級制覇です。

選手・セコンド・応援の皆さん、お疲れ様でした。


4.原稿書きも佳境に入っています。  7月にはブログを再開できればと思い、ひたすら原稿書きにいそしんでいます。  

そんな中の息抜きがNBA(アメリカ・プロバスケットボール)のプレーオフです。  ファイナルに勝ち進んだ、ゴールデンステイト・ウォリアーズは第1戦でクリーブランド・キャバリアーズに先勝しました。  これからWOWWOWで第2戦です。




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