PREV | PAGE-SELECT | NEXT

「身がこわばる」と「身が引き締まる」

脳科学者の茂木健一郎さんと将棋の羽生善治さんが書かれた『「ほら、あれだよ、あれ」がなくなる本』(徳間書店刊)を読みました。  羽生さんが書かれた「ベストパフォーマンスを発揮するには」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①当然のことながら、挑戦をしていく、あるいはなにかをやっていく時には、モチベーションややる気というのが非常に大きく影響していると思います。  最近、スポーツをしているアスリートたちが、インタビューの受け答えなどで、「楽しんでやりたいです」「楽しんでその競技に打ち込みたいです」という趣旨の発言をしていることが、非常に多いような気がします。

②彼らや彼女らがなにかのメンタルトレーニングを受けてそう言っているのか、あるいは自分自身の経験則から話しているのかは判別できないのですが、本当にそのとおりだなと思います。  どういう状態がいちばんいいパフォーマンスを発揮できるかと言われたら、ほぼ間違いなく楽しんでいて、落ち着いていて、リラックスしているという状態がいちばんいいということになります。

③ただ、これも現実的な話として、いつもいつも、どんな状態でもリラックスをしていて、落ち着いていて、ゆとりを持った心持で臨めるかと言われたら難しいと思います。  時には緊張してしまったり、焦ってしまったり、慌てたり、あるいはプレッシャーにさいなまれるというようなこともあります。

④そういうプレッシャーがかかっている時に、棋士はどんなふうに考えているかというと、一つにはプレッシャーがかかっている状態や緊張している状態というのは、最悪ではないと思っていることです。  いちばん悪いのは、やる気がない状態だと思います。  どんなに能力があってもやる気がないわけですから、そこはいかんともしがたいことです。  しかし、少なくとも緊張している状態は、やる気はあるということになります。

⑤もう一つは、そういう緊張とか、プレッシャーがかかっている状態というのは、けっこういいところまで来ているということが多いということもあります。  (中略)  あともう少し、もう一歩のところで目標に到達できるとか、次のところに進むことができるとか、そういうときにプレッシャーはかかりやすいということです。  (中略)  自分でもあと少しという手応えがあるからこそ、緊張してしまうのではないかと思っています。

⑥もう一つは、プレッシャーのかかる状態に挑戦していくとか、緊張している状態に身を置くということによって、初めてその人が持っている能力とかセンスとかが、開花するということもあると感じています。  (中略)  日常の練習の中でも一生懸命やっていますが、どういう時にいちばん深く考えているか、どういう時にたくさんアイデアを思いつくかというと、それはやっぱり公式戦です。  待ったができなくて、緊迫して、時間に追われているという状態なのです。  そういう状況環境に身を置くことによって、さらに自分が持っているものが発揮されていくということがあるのではないかと思っています。

⑦日本語の表現ってすごいなと思う時があります。  緊張しているとか、プレッシャーがかかっているとか、なにか上がってしまっている時に、それが程よい場合と、ガチガチになってしまってうまくいっていない場合の2種類があると思います。

⑧よくない緊張には「身がこわばる」という表現があります。  身がこわばっているという表現が当てはまる時は、あまりいい状態の緊張ではありません。

⑨いい緊張には「身が引き締まる」という言葉があります。  身が引き締まっているというのは、ある程度の力は入っているのですが、ただ、必要以上は入っていない状態です。

⑩適切な状態の緊張感、緊迫感を持っているということなので、なにかに挑戦していく時に「身が引き締まるような」状態を作り上げていくというのがちょうどいいのではないかと思っています。』

私の経験では、大事な試合や試験の際に、⑧~⑩に言う「身がこわばる」のではなくて「身が引き締まる」状態を作り上げられるようになるには、「場数を踏む」しかありません。  試合や審査会のあいさつでもよく話しますが、試合や審査会というのは、「場数を踏む」ための大事なトレーニングの場でもあります。

2週間前は城西カップ、昨日はビギナーズカップ、今週末は第48回全日本大会と試合が続きます。  選手の皆さんの参考になればと思い、若干長くなりましたが、紹介しました。

TOP↑

PREV | PAGE-SELECT | NEXT