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人類は絶滅を逃れられるのか

『人類は絶滅を逃れられるのか』(スティーブン・ピンカ―他著 藤原朝子訳 ダイヤモンド社)を読みました。  

1.「訳者まえがき」から抜粋して紹介します。

『いったい人類の未来は明るいのか、それとも、実はピークを過ぎて絶滅に向かっているのか・・・。  2015年11月、そんな疑問と不安をテーマにしたディベートが、カナダで開かれた。  (中略)  このディベートは4人の識者に議論してもらうだけでなく、聴衆がディベートの前と後でどのくらい意見を変えたかによって勝敗を決めるのも魅力の一つ。』  


2.このディベートで肯定派を任ぜられたスティーブン・ピンカー(認知心理学者・ハーバード大学心理学教授・1954年カナダ生まれ)の発言から抜粋して紹介します。

『人類に起きた10のいいことをリストアップしてみました。

第一に、寿命。  150年前、人間の寿命は30年でしたが、今は70年で、まだ伸びそうです。

第二に、健康。  人類に最大級の苦痛をもたらしてきた二つの原因(天然痘と牛疫)は、永久に撲滅されたのです。

第三に、豊かさです。  200年前、世界の人口の85%は極貧生活を送っていました。  それが今は10%に低下しています。  さらに国連によると、この割合は2030年、までにゼロになりそうです。

第四に、平和。  先進国間の戦争は70年、超大国間の戦争は60年間起きていません。  内戦は相変わらずありますが、数は減っていますし、国家間の戦争ほどの破壊性はありません。

第五は安全です。  世界の暴力犯罪の発生率は低下しています。  それも多くの場所で大幅に。  主な犯罪学者の間では、向こう30年間で世界の殺人発生率は現在の半分に減ると見られています。

第六に、自由。  逆行している国はありますが、世界の民主主義指数は史上最高です。  世界の人口の60%以上がオープンな社会に住んでいます。  こちらも史上最高です。

第七に、知識。  1820年、基礎教育を受けている人は17%にすぎませんでしたが、現在は82%に上昇し、急速に100%に近づいています。

第八に、人権。  世界的なキャンペーンが展開されてきたこともあり、児童労働、死刑、人身売買、女性に対する暴力、そして同性愛を犯罪とみなす国は大幅に減ってきました。

第九に、男女平等。  世界的なデータを見ると、女性の教育水準が高まり、婚期が遅くなり、所得が増え、権力や影響力のある地位に就くことが増えていることが分かります。

最後に、知性。  すべての国で、知能指数は10年で3ポイントのペースで上昇しています。』


3.ディベートで否定派を任ぜられたアラン・ド・ボトン(哲学者、エッセイスト、作家・1969年スイス生まれ)の発言から抜粋して紹介します。

『私はスイスで生まれ、人生のかなりの年月をスイスで過ごしてきました。  教育制度は素晴らしく、国民の平均年収は5万ドルで、1648年のウェストファリア条約以来平和で、病院のレベルは最高です。  

ところがそんなスイスもパラダイスではありません。  実際に多くの問題を抱えています。  私はこれを「第一世界の問題」と呼びたいと思います。  なぜスイスと、スイスのような国が完全ではないのでしょう。

それは第一に、理性をもってしても、人間の愚かさはなくならないからです。  啓蒙主義は、「人間は正しいことを教えられれば、それを実行に移せる」と約束します。  つまり悪いことが起きるのは、無知のせいだと考えたのです。  しかしそれは違います。  愚かさは、そう簡単にはなくなりません。

第二に、GDP(国内総生産)が増えても、貧困は撲滅できません。  多くの百万長者や億万長者が、まだ物足りないと感じています。  これこそが真の貧困です。  そして残念ながら、その感覚は大きくなっており、どんな所得レベルになっても存在します。

第三に、卑劣性と暴力と残虐性が行き着く先は、戦争とはかぎりません。  たとえお互いに死ぬまで殴り合わなくても、こうしたことは社会に存在し続けるのです。

第四に、スイスには天然痘もギニア虫症もなく、医療は非常に進んでいます。  それでも人々は依然として死んでいっています。  つまり人間は、死を克服することはできていないのです。』


4.以下は結果に関する記述です。

『ディベート前の投票では肯定派は71%、否定派は29%だった。  ディベート後の投票では、肯定派は73%、否定派は27%だった。  否定派から肯定派に意見を変えた人のほうが多かったことから、このディベートの勝者はスティーブン・ピンカーとマット・リドレーとする。』

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