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改革

明けましておめでとうございます。  本年もよろしくお願いいたします。

今回は全日本柔道男子監督の井上康生さんが書かれた『改革』(ポプラ社)を取り上げます。  史上初の金メダルゼロに終わった2012年のロンドン五輪後に監督に就任された井上さんは、昨年のリオデジャネイロ五輪で1964年の東京五輪以来となる「全階級メダル獲得」を達成されました。

『試合展開のパターンが多いのが強い柔道家』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①かっての日本には「組んだら(一本を取って)勝てる」という強烈な自負がありましたし、実際にそれで勝っていましたから、いわゆる「ポイント狙いの柔道」は、「柔道じゃない」「邪道だ」とされてきました。  しかし、もうそういう時代ではないのです。

②現実的には、これまで日本柔道がすすんでやってこなかったような、指導を取ったり、有効や技ありを狙ったり、指導を取られないためのディフェンス技術など、試合で勝つための細かいテクニックが必要になっています。  言い換えると、確実に勝利を収めるための、負けない技術です。  (中略)

③実際の試合は、最終的に一本を取ることを目指していても、そのための過程は必ずあって、多様な展開があります。  ですから、練習では、一本を取るイメージだけでなく、「あんな流れに持ち込みたい」「こんな方法でポイントを奪いたい」という試合の展開図を描きながら行う必要があります。

④試合展開のパターンをいくつも描ける人間は強いです。  さまざまなストーリーを描きながら、自分の柔道を展開していく想像力を持ち、たとえ指導による優勢勝ちであっても「どんなことをしてでも勝つ」という発想で日ごろから練習できているので、対応力があるのです。  そうした選手は、想像力のある究極のリアリストと言っていいでしょう。

⑤もっと言えば、世界の頂点に立つには、その柔道を刻々と変化させていく柔軟性と多様性が求められます。  近年、世界ランキングの関係で、日本人選手は一人につき平均年間3~4大会、多い選手だと6~7大会も国際大会に出場しています。  そのため、技や攻めパターンはすぐにライバルに研究、攻略されてしまいます。

⑥ですから、得意技や攻めパターンは絶えずブラッシュアップをしていかなければいけません。  大会ごとに新しい技や攻め手を繰り出し、対戦相手を常に幻惑させられるような選手でなければ、今の世界では生き残っていけないのです。

⑦我々は、あくまでしっかり組んで一本を狙う柔道を追求していきます。  しかし、それだけでは現実と乖離していますので、一本をベースに、指導を取ったり、有効を奪ったりといった技術を使い、確実に勝利を収める柔道も並行して追求していきます。

⑧それが、「強いこと」と「勝つこと」の両方を求められている日本柔道だと思います。』

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