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生き残る判断 生き残れない行動

1月29日のブログで、『震度7の生存確率』(仲西宏之・加藤和彦著 幻冬舎)の中の以下の文章を紹介しました。

『ところが物理的・心理的な原因以外にも人が動けなくなる理由があります。  それは、「麻痺」と呼ばれる状態に陥ることです。  アマンダ・リプリーの『生き残る判断 生き残れない行動』(光文社)では「特定の状況下では、炎上している飛行機、沈没しかけている船、また急に戦場と化した場所などでも、多くの人はまったく動きを止めてしまう。」と報告しています。』 

今回は『生き残る判断 生き残れない行動』から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『第1章 立ち遅れ
(2001年9月11日の同時多発テロの生存者が2回目の爆発音について)「わたしに関して言えば、本当に、そんなことは一切起こらなかったようだった。」心理学者はこれを「解離」と呼んでいる。  その言葉がもっともよく使われるのは、子供たちが身体的虐待から心理的に距離を置くのを描写する際である。  だが生死にかかわる状況においても、こうしたことが起こるのだ。

第2章 リスク
①「アメリカン・テイスト」誌に掲載された2003年の分析によると、1992年から2001年にかけて主要な民間の国内線飛行機で死ぬ可能性は、おおよそ1億分の8だった。  それに比べて車で平均的なフライト区間と同じ距離を走れば、約65倍もの危険を伴うのである。

②デニス・ミレティは、ハリケーンや地震などの脅威の際に、人々にどのように警告したらいいのかを30年あまり研究してきている。  ミレティによると「ハワイでは、地震を感じたら、(津波に備えて)高台に行くのが今や文化の一部になっている」。

③火事の場合には、たいていは地下鉄の車両にとどまっていたほうがいいのはなぜかを説明する機会でもあった(線路のレールで感電死するかもしれないし、トンネルは何箇所かが狭すぎて電車が来るとうまく通り抜けられないから、と)。

④毎年、世界中でサメに殺される人間は平均6人である。  人間は(食用等で)2600万匹から7300万匹のサメを殺している。

第3章 恐怖
①極度に圧迫された状況の下では、体は消化や唾液分泌、ときには膀胱や括約筋のような、肝要でないいくつかの機能を放棄する。

②生死にかかわる状況においては、訓練を受けていない人々の心拍数は、たちまち毎分200回まで上がる・・・手の打ちようのないほどの最高レベルである。  そこで、訓練と経験を通して生存ゾーンを広げることが秘訣になる。

③恐怖反応を扱うのに簡単な方法がある。  どうすれば恐怖に打ち勝つことができるのかを戦闘トレーナーに尋ねると、繰り返し彼らが語ってくれたのが呼吸法だった。  呼吸は、体神経系(意識的に制御できるもの)にも自律神経系(容易に意のままにできない心臓の鼓動やほかの活動を含む)にも存在する数少ない活動の一つである。  だから呼吸はその二つの神経系の架け橋だと、戦闘指導教官デーヴ・グロスマンは説明している。

④笑いも、呼吸と同様に、感情的な覚醒のレベルを下げる。  このことはまた、わたしたちがより状況を制御しているという気にさせてくれる利点がある。

第5章 集団思考
①一般の人々に飛行機からの模擬避難をさせる実験をした。  人々は、とりわけ女性は、脱出スライドに飛び降りるまでに驚くほど長い間ためらい、そのためらいが全員の避難を遅らせることになった。  しかし人々をより迅速に動かすことができる方法があった。  客室乗務員が出口に立ち、飛び降りるよう大声で叫べば、ためらいはほとんどなくなることが分かったのだ。

②(2004年に東南アジアで発生した地震の際、震源地にきわめて近い)シムルエ島のランギでは、地面が揺れたとき、だれもが高台へ向かい・・・そこでしばらくとどまった。  何があってもそれが伝統だったのだ。  シムルエ島全島で、津波で亡くなったのは7万8000人のうち7人だけだった。  しかも、7人全員が、自分が持ち出すものをまとめていたため亡くなったのだ。

第7章 麻痺
麻痺状態になる動物は、ある種の攻撃を生き延びる可能性がより高くなる。  ライオンは、病気や腐敗した獲物を食べるのを避ければ、生き延びて遺伝子を伝える可能性が高くなる。  多くの捕食動物は、もがいていない獲物には興味を失う。  それは食中毒を避けるための太古からのやり方である。  そして今度は、餌食になる動物がこの隙を有効に生かすべく進化した・・・捕らわれたときに死んだふりや病気になったふりをすることによって。

第8章 英雄的行為
鳥肌はそのほかの生存反応と同様に、明らかに進化に由来するものであり、人間の恐怖反応がいかに時代遅れであるかの典型的な例である。  たくさんの毛におおわれた動物の場合、鳥肌は寒さの中で断熱性を高めるのに役立つ。  あるいは、動物は怯えると、鳥肌が立って毛が逆立ち、ふだんより威嚇するような外形がつくりだされる。  だが言うまでもなく、人間にはそのような恩恵をこうむるだけの毛は生えていない。

結論
①災害専門家は、なりわいとして災害について考えているわけだが、無力感にとらわれることはない。  万一の場合に脳に近道を与えるために必要な、ちょっとしたことをしているのだ。  たとえば、連邦航空局の人的要因分析者は、飛行機に搭乗すれば必ずいちばん近い出口を探す。  そして、たいていの人が役に立たないと考えている安全のしおりを読む。  かれらがそうするのは、飛行機によってそれぞれ型が異なっているからで、墜落事故が起これば脳の機能が低下する可能性があることをわかっているからである。

②世界貿易センターの避難の研究を指揮しているロビン・ガーションは、ホテルにチェックインするたびに、階段を使って降りる。  たいていのホテルの階段は、奥の部屋を通り抜けて思いがけない通りに出てしまうようなややこしい通路をたどるようになっていることを彼女は知っている。』

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