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速筋と遅筋

『百歳まで歩く』(田中尚喜著 幻冬舎文庫)を読みました。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①筋肉の性質で瞬発力のある筋肉が「速筋」で、持久力がある筋肉を「遅筋」として分けます。  速筋は、非常にすばやく収縮することができる瞬発力のある、太くて大きな筋肉で、疲れやすい特徴があります。  速筋は内部に糖質を含んでいるので、酸素が送り込まれなくても糖質を分解して収縮など筋肉としてのリアクションを起こすことができるのです。  そのために乳酸がたまりやすくて疲れやすく、筋肉痛の原因にもなりやすいわけです。  (中略)  また鍛えることで筋肉もりもりの隆起した筋肉になるのも、この速筋のほうです。

②反対に遅筋は、ゆっくりと収縮する小さな筋肉。  筋肉痛を起こしにくく、疲れにくいのが遅筋です。  それでも、ゆっくり収縮する遅筋に瞬発力がまったくないわけではなく、速筋に比べると瞬発力が劣るというだけなのです。

③そして「座る、立つ、歩く」といった日常動作に必要な筋肉は、速筋より遅筋が中心になります。  逆の言い方をすると、人が活動する上で速筋のような疲れやすい筋肉が多いと都合が悪いでしょう。  日常的な動作ですぐに疲れてしまわないように、「座る、立つ、歩く」に使う筋肉は、最初から遅筋が多くなっています。

④そのほかにも、遅筋は小ささを補うために、筋肉を構成する1本1本の筋繊維が特殊な形状をしていたり、遅筋の部分は速筋より筋繊維の量が多い構成になっています。  その結果、遅筋は速筋に比べて柔軟性があるので、遅筋を中心に使うトレーニングやスポーツはケガもしにくいのです。  (中略)

⑤私が、〝スポーツと遅筋〟の関係で注目しているのが相撲です。  相撲の練習では、昔からシコと鉄砲です。  なかでも柱に向かってゆっくり押し出す鉄砲が、遅筋を鍛えます。  しかし、近年の相撲部屋では、従来のシコと鉄砲を重視した練習より、トレーニングマシーンを使った練習が多く行われるようになりました。  

⑥その結果、遅筋よりも速筋が鍛えられることになりました。  で、最近の取り組みは瞬発力のある相撲が中心になり、持久力のある相撲が少なくなった。  がっぷり組み合ったまま水入りになるような、見ごたえのある相撲はなかなか見られないなあ・・・、というのが私の感想です。

⑦また、昔に比べると、力士がケガで休場することが多くなりました。  このことにも、遅筋を鍛えることが疎かになっていることが関係していると、理学療法士の立場からは推測しているのですが・・・。  繰り返しますが、すばやく力強く収縮し、柔軟性において劣る速筋、その速筋を中心に鍛えているとケガもしやすいのです。

⑧困ったことに、中年になってスポーツジムで筋トレを始めた人に膝を痛める、腰を悪くするなどの故障が多発していますが、これはマシーンを使ったトレーニングなど速筋だけを集中的に鍛えた結果です。  (中略)  さらに、遅筋を鍛えることは、速筋を鍛えるより脂肪が燃焼しやすいというメリットもあるのです。  中年太り対策という点でも遅筋を鍛えることはベストでしょう。  (中略)

⑨例えば腹筋でも、若い人たちはピストンのような速い運動ですが、中高年ではゆっくり起き上がりゆっくり下ろす腹筋運動のほうがはるかに効果的です。  速いスピードのトレーニングでは大きな筋肉だけが動くことになります。  速筋を中心に鍛えることになるので、同じ内容のトレーニングでも疲れやすく、筋肉痛やケガの原因にもなります。

⑩また、ゆっくりだと、大きな筋肉だけでなく内側の小さな筋肉も動くことになり、中高年に必要な遅筋を鍛えることもなります。  どんな内容の筋力トレーニングでも、中年以降は、個々の動きをできるだけゆっくりと行うほうが有効です。  (中略)

⑪大臀筋(お尻)は遅筋の割合が多いことで知られており、ヒラメ筋(ふくらはぎの裏)は実にその8割が遅筋で構成されています。  (中略)  ハムストリングス(ももの裏)は遅筋よりも疲れる筋肉の速筋の割合が高く、歩行のスピードを上げるときや、走るときなどによく使われます。  (中略)

⑫歩き方が悪いと、本来は遅筋(大臀筋やヒラメ筋)を中心に使って歩くところを、速筋(ハムストリングス)を中心に使って歩くことになります。  そうなると、同じ距離、同じ時間を歩いても、膝を伸ばして背中をまっすぐにした正しい姿勢で歩いている人より疲れます。  (中略)

⑬大股で膝を曲げ、背中を丸めて(ハムストリングスを中心に使って)歩く姿勢は、中高年以降から始まりやすい歩行時の姿勢なので、中高年の段階で悪い姿勢の歩行を改善することが、将来的に歩行距離を長く維持できるかどうかのポイントになるでしょう。』

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