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ゴリラのリーダーシップ

哲学者の鷲田清一・京都市立芸術大学学長とゴリラ研究の世界的権威の山極寿一・京都大学総長の対談集『都市と野生の思考』(インターナショナル新書)を読みました。  

1.「松下幸之助のリーダーシップはゴリラそのもの」の項から抜粋して紹介します。

『鷲田・・・松下幸之助さん(パナソニック創業者)はリーダーの条件を三つ挙げたそうです。  まずは愛嬌、これはゴリラにも通じますね。  二つ目は運が強そうなこと、実際に運が強いかどうかはともかく強そうに見えることが大切だと。  これもゴリラと同じでしょう。  三つめが後ろ姿だというのです。

山極・・・なんと!  ゴリラそのものじゃないですか。  まず愛嬌は、ゴリラでいえば抑制力です。  オスのゴリラは体重が200キロを軽く超える。  そんな巨体でも、子どものゴリラや他の動物と無邪気に遊べます。  体は大きいけれど、その力を抑制できるので、みんな安心して寄ってくるのです。  子どもがめちゃめちゃ叩いたりしても、ドーンと構えている。

鷲田・・・怒ったりしない?

山極・・・もちろんです。  だから、みんなを惹きつけることができる。  本当は強いんだけれど、それを抑えていることができる。  これが愛嬌なんですよ。  運が強そうに見えるとは、リーダーのそばにいると大丈夫だということ。  これがディスプレイなんですよ。

鷲田・・・あの胸をどんどん叩く、ドラミングという行為ですか。

山極・・・ゴリラのオスがドラミングしてまわりを威圧すると、彼のそばにいれば安全だという目印になる。  これもゴリラのリーダーの要件です。  背中で語るなんてまさにゴリラの常とう手段ですよ。  リーダーは群れの先頭を歩いていき、絶対に振り返らない。

鷲田・・・まさか、松下幸之助さんが、ゴリラと同じ悟り方をしていたとは(笑)。

山極・・・松下さんが、自分の人生を突き詰めてたどり着いた悟りがゴリラと同じだったとは実に感慨深い。  人間の世界でも本当のリーダーは、人がまわりで騒いでいても聞いていないふりをしているでしょう。  これからの時代、俺についてこい式のリーダーだったら困るのですよ。  リーダーというと、どうしても戦いの場というか競争する場におけるリーダーと捉えがちです。  けれども、これからのリーダーに求められるのは、人の話をじっくり聞けて、相手の立場で考えられること。』

2.「負けない論理」の項からも抜粋して紹介します。

『鷲田・・・山極さんからゴリラの話を聞いて、いいなあと思うのが、勝者敗者がいないということです。

山極・・・彼らには「負ける」という意識がないのです。  一方、ニホンザルは勝敗を決めて、弱いほうが引き下がる。  勝ったほうがすべてを独占する。  これは勝つ論理です。  でも、ゴリラは勝敗を決めない。  つまり、勝ちをつくらない。  みんなでこぞって負けそうなやつを助ける。  これは負けない論理なんですね。

鷲田・・・負けない論理と勝つ論理はまったく違うということですね。  勝つ論理とは、相手を屈服させて、押しのけて、自分から遠ざけることによって権威の空間をつくる。  そうすると人は必然的に離れていく。

山極・・・勝つ論理はもう必要ないと思います。  求められるのは負けない理論であり、そのゴールは相手と同じ目線に立つことです。  だから、決っして相手を遠ざけたりしない。

鷲田・・・むしろ相手を惹きつけるのが負けない論理か、いい言葉ですね。』

京都大学総長に就任したとき、座右の銘はと聞かれて、山極さんは「ゴリラのように泰然自若」と答えたそうです。

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