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勝負脳

『〈勝負脳〉の鍛え方』(林成之著 講談社現代新書)を読みました。  「勝負脳」という言葉は、脳外科医の林成之先生の造語で、「勝負に勝つための戦略を練る知能」のことだそうです。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①若い選手を育てる方法として、「おまえはできない、だめだ」と叱りながら意欲を高め、その成果を引き出そう、という指導がよく行われています。  新しいことや正しいことを、強制的な力をもって植え付けるという意味で、この指導法にもプラスの効果があることは、私も否定しません。  しかし、反面、見逃してはならないマイナスの効果もあるのです。

人間には自分を守りたいという、自己保存の本能があります。  しょっちゅう叱られていると、脳は苦しくなって、脳自身を守るために、叱っている人の話を受け流すようになります。  その状態が慢性化すると、だんだん、人の話を真剣に聞かない脳ができあがっていきます。  その結果、間違った考え方を持っても気づかない、少し間違っても気に留めない、訓練が長続きしない、習得がなかなか難しいといった困難から逃げてしまう脳、いわば逃避脳を作り出す結果になってしまうのです。

②格闘技などで、相手が自分より技術が上で、これなら勝てると自信を持って自分の弱点を攻めてきた場合、こちらは明らかに負けパターンに追い込まれているわけですが、このような状況でも、試合に勝つポイントがいくつもあるのです。

相手はどうせ勝てると思っているので最初から全力を出してこない、弱点を攻めて安易に勝とうとしているので勝負勘はそれほど働かせていない、慢心による隙(すき)があるので受身が弱い、などのマイナス要素を見出すことができるわけです。  これを利用して、思いもよらない戦略で勝つチャンスが、技が劣っている側にも生じます。  そして、このような頭の働かせ方をするのが、「勝負脳」なのです。

③結果を意識するのではなく、それを達成するために必要な技や作戦に、気持ちを集中させるのです。  (中略)  9回裏、2死満塁、得点差は1点という状況では、ピッチャーはバッターを打ち取るという結果ではなく、打ち取るためのボールをどう投げるか、あるいは、自分が自信を持っているボールをどう投げるか、に気持ちを集中させることです。  

「目的」と「目標」を分けて考えるという勝負脳を使うことが、自分のベストのプレーを可能にし、ひいては、観ている人々にも感動を与えるのです。  (中略)

それは、「勝つ」という「目的」ではなく、「勝ち方、あるいは、勝つために求められる技や作戦」という「目標」に向かって、全力を傾けることです。  (中略)  実は、この方法こそ、勝負を意識すると体が硬くなる習性を持つ日本人にとって、理にかなった対策なのです。』

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