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五木寛之先生と帯津良一先生

『健康問答』(五木寛之・帯津良一共著 平凡社刊)を読みました。  作家の五木先生と、医学博士の帯津先生の対談集です。  『笑いは、ほんとうに元気の源か』という項から抜粋し、紹介します。

『五木・・・アメリカの病院で行った調査では、笑うことも、涙することも、ともに人間の自然治癒力を向上させたというんですね。  とくに涙のほうが、笑いよりも、強く、長くつづく結果が出たと報告していたんです。  私は、笑いと同じように、涙の効用を説いてきましたから、ああ、やっぱりと納得するものがありました。  明るく前向きに生きることは大切で、心身にもよいのだけれども、無理することはない。  泣きたいとき、落ち込んだときは、自分の感情のままに、泣いたり、深く嘆息をつけばいいと、私は思うんですよ。

帯津・・・同感です。  深刻な状況にあるガンの患者さんや、家族に対して、「明るく前向きに」という言葉は酷ですよ。  人間は、ほんらい、そんなに明るい存在じゃない。  悲しくて寂しいものだと思うんです。  だから、患者さんたちにいうんですよ。  「人間は悲しくて寂しいものだ、ときめようじゃないか」と。

五木・・・お医者さんにそういってもらえると、患者さんは嬉しいでしょうね。  昔の仏教徒は、人は生老病死(しょうろうびょうし)の苦しみを背負って、泣きながら生まれてきて、泣きながら死んでいくものだ・・・と教えられてきたから、笑え、笑え、嘘でもいいから大声で笑えといわれると、すごく違和感を覚えるらしい。  でも、主治医の先生が、「人間はいずれ死ぬ。  君も私も。  この世はつかの間の旅みたいなもの。  それぞれが、一人ひとりの重荷を背負って、生きていくんだよ」という考えをもっていると、すごく楽になりますね。

帯津・・・ええ。  その寂しさ、悲しさの原点に立って、一歩ずつ、少しでも明るい方向に、歩いていけたらいいんじゃないかと思うんです。  無理に笑うこともなければ、無理に泣く必要もない。  ただ、あるがままにですね。

五木・・・そう、ときどき、あーあ、と長い嘆息をつきながらね。』

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