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清原和博さん『男道』

『男道』(清原和博著 幻冬舎刊)を読みました。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①この膝では、どうやっても昔のスイングは取り戻せない。  それははっきりしていた。  だから、2008年の残りのシーズンで終わりにしよう。  それ以上、球団に甘えるわけにはいかない。

②実家に帰って、両親を祖父母の墓参りに誘った。  祖父母の墓は、昔彼らが住んでいた村の裏手の小高い場所にある。  僕はそこによく帰ってきていた。  ジャイアンツ時代も、何かあるとひとりでハンドルを握り、高速を飛ばして帰ってきていたのだ。  岸和田の実家に帰るより、お墓参りの回数のほうが多かったかもしれない。  (中略)

③そのお墓の手前でクルマを降りて、母に背中を向けた。  「久しぶりにおんぶしてやるわ」と言った。  母は何か感じたのかもしれない。  黙って背中に乗った。  (中略)  母を背負ったのは、顔を見ていると言い出せなくなりそうだからだ。  背負ったとたん、堰(せ)き止めていたものがあふれて、涙がこみあげた。  (中略)

④「お母さん、僕な、野球やめるわ」  涙をこらえて、なるべくさりげなく言った。  母はびっくりするほど大きな声で応えた。  「わかった。  もうやめ」  母も嗚咽(おえつ)していた。

⑤何があっても絶対諦(あきら)めるなと言う、強い母だった。  (中略)  試合でデッドボールを受けて部屋に帰ると、母がよくものすごい勢いで怒っていた。  僕より怒っていた。  「あのピッチャーのボケは、ほんまにもう・・・・・・」  (中略)  「何もそこまで怒らんでも」  母をなだめるしかなくて、それで僕の怒りもおさまるのだった。  そういう母が、もうやめなさいと言って泣いていた。

⑥打ち明けて良かったと思った。  母はいくつも難しい病気を抱えている。  それでも元気でいてくれているのは、僕が野球をやっているからだ。  僕が野球をやめると言ったら、張り合いをなくして元気を失ってしまうんじゃないかと心配だった。  けれど母も僕がやめると知って、ほっとしたようだった。』

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