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村上龍さん『無趣味のすすめ』

『無趣味のすすめ』(村上龍著 幻冬舎刊)から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①わたしは趣味をもっていない。  小説はもちろん、映画製作も、キューバ音楽のプロデュースも、メールマガジンの編集発行も、金銭のやりとりや契約や批判が発生する「仕事」だ。  

②息抜きとしては、犬と散歩したり、スポーツジムで泳いだり、海外のリゾートのプールサイドで読書をしたりスパで疲れを取ったりするが、とても趣味とは言えない。

③現在まわりに溢(あふ)れている「趣味」は、必ずその人が属す共同体の内部にあり、洗練されていて、極めて完全なものだ。  考え方や生き方をリアルに考え直し、ときには変えてしまうというようなものではない。

④だから趣味の世界には、自分を脅(おびや)かすものがない代わりに、人生を揺(ゆ)るがすような出会いも発見もない。  心を震(ふる)わせ、精神をエクスパンド(expand・・・拡張する)するような、失望も歓喜も興奮もない。

⑤真の達成感や充実感は、多大なコストと危機感を伴った作業の中にあり、常に失意や絶望と隣り合わせに存在している。

⑥つまり、それらはわたしたちの「仕事」の中にしかない。』

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