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江原啓之さん『信仰』

『悪意/善意』(江原啓之著 小学館刊)から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①日本の大きな特徴として挙げられるのは、支配的なひとつの宗教を持たない、ということです。  諸外国を見ると、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教など、それぞれの宗教が強い力を持っています。  (中略)

②そんな日本ですが、昔は他国の宗教にまさる以上のものを持っていたのです。  たとえば、「そんなことをすると、バチが当たるよ」 「お天道様(てんとうさま)は見てらっしゃるよ」と昔の人はよく言いました。  

③その言葉の中にあるもの、それは人々の生活に息づいていた「信仰心」なのです。  「信仰」というと、宗教を思い浮かべがちですが、必ずしも宗教とは関係ありません。  (中略)

④また、日本にはたとえば「武士道」という「道」がありました。  ほかにも茶道、華道、柔道、剣道、合気道・・・。  たくさんの「道」があります。  それぞれの「道」には、必ず人の生き方を示唆(しさ・・・それとなく物事を示し教えること)する哲学が含まれていたのです。

⑤誇りを重んじ、自分の弱さに打ち克つこと、人にやさしく己に厳しくすること、いまここにある自分を受け入れること、信じるものに全精力を傾けて打ち込むこと・・・。  そんな、たましいを鍛える方法を説く「道」が日本にはたくさんありました。

⑥日常に根ざした素朴な信仰、生き方を説く「道」への信仰、それらは教典(きょうてん・・・教育上または宗教上の基本となる書物)主義に陥っている宗教以上に、強く人々の心に訴え、その生き方を支える力がありました。

⑦けれどそういった素晴らしい「信仰」を、日本は失いました。  戦後の価値観の大転換が、そのきっかけではあったでしょう。  「目に見える物質だけがすべて」と思うようになってしまった。  そして、日本の伝統的な考え方を、よいものも悪いものも含めて捨ててしまった。  それは、戦争がもたらした、とても大きな損失だったと思います。』

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