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白石豊先生『苦しい時こそ笑顔で』

福島大学教授の白石豊先生が書かれた『本番に強くなる』(筑摩書房刊)から抜粋し、番号を付けて紹介します。  白石先生はアトランタオリンピックでは女子バスケット、シドニーオリンピックでは新体操の日本代表チームのメンタルコーチを務められました。

『①〝苦しい時こそ笑顔で〟。  これは、私がメンタルトレーニングを指導している選手達に、たえず言い続けている言葉である。  (中略)

②1996年にアトランタオリンピックに出場した日本女子バスケットボールチームのメンバーには、〝苦しい時こそ笑顔で〟を合い言葉にしようと教えていた。  そして奇跡が起こったのである。  (中略)

③出場できるのは12チーム。  この中で日本のランキングは、11位でしかなかった。  初戦でロシアに敗れた日本は、2戦目で世界2位の中国と対戦した。  日本チームも善戦したが、世界の壁は厚く、前半を終えて16点もの大差をつけられてしまった。

④後半も苦しい戦いを強いられたが、残り15分ほどのところで、突然、5人の選手がいっせいに笑顔を見せたのである。  ほんの一瞬のことだったが、私にははっきりと見て取ることができた。  同時に何かが起こるのではないかという思いが湧いてきた。  

⑤今も日本リーグの連続得点王(2006、2007年)として活躍している小磯典子選手の絶妙なフックシュートが決まったところから、急に流れが変わってきた。  次々と日本のスリーポイントシュートが決まり始め、逆に中国に焦りが見られるようになった。  

⑥そして残り2分を切ったところで、エース萩原美樹子選手のスリーポイントシュートが決まって、ついに同点となった。  さらに相手のシュートミスからリバウンドを奪い、パスを受けた萩原選手が一人で持ち込んで勝ち越しのシュートを決めたのである。

⑦試合終了のブザーが鳴った。  世界11位の日本が世界2位の中国を破った瞬間だった。  メンタルコーチとしてベンチの横にいた私は、あまりの出来事にコートで抱き合う選手達を呆然(ぼうぜん)と見つめていた。  まさに鳥肌が立つようなシーンだった。

⑧私は、選手達が、残り15分で見せたあの笑顔を、10年以上経った今も鮮明に覚えている。』

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