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渋沢栄一『逆境』

『現代語訳 論語と算盤』(渋沢栄一著 守屋淳訳 ちくま新書)を読みました。  渋沢栄一(1840~1931)は約470社もの企業の創立・発展に貢献した実業家です。  『立派な人間が、真価を試される機会』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①時代の推移につれて、常に人生には小波乱のあることはやむを得ない。  だから、その渦中に投じられて、逆境に立たされる人も常にいるのであろうから、「世の中に逆境は絶対にない」といい切ることはできないのである。

②ただ、逆境に立たされる人は、ぜひともその生じる原因を探り、それが「人の作った逆境」であるのか、それとも「人にはどうしようもない逆境」であるのかを区別すべきである。

③このうち「人にはどうしようもない逆境」とは、立派な人間が真価を試される機会に外ならない。  では、「人にはどうしようもない逆境」に立たされた場合、その境遇にどう対処すべきなのかというと、わたしは神様ではないので、それに対する特別の秘訣を持っているわけではない。

④しかし、わたし自身が逆境に立たされたとき、自分でいろいろと試し、また何が正しい道筋なのかという観点から考えてみたことがある。  その内容をここで明かしてしまうと、それは逆境に立たされた場合、どんな人でもまず、「自己の本分(自分に与えられた社会のなかでの役割分担)」だと覚悟を決めるのが唯一の策ではないか、ということなのだ。

⑤現状に満足することを知って、自分の守備範囲を守り、「どんなに頭を悩ませても結局、天命(神から与えられた運命)であるから仕方ない」とあきらめがつくならば、どんなに対処しがたい逆境にいても、心は平静さを保つことができるに違いない。

⑥ところがもし、「このような状況はすべて人のつくり上げたものだ」と解釈し、人間の力でどうにかなるものであると考えるならば、無駄に苦労の種を増やすばかりでなく、いくら苦労しても何も達成できない結果となる。

⑦だからこそ、「人にはどうしようもない逆境」に対処する場合には、天命に身をゆだね、腰をすえて来るべき運命を待ちながら、コツコツと挫けず勉強するのがよいのだ。

⑧これとは逆に、「人の作った逆境」に陥ったらどうすればよいのだろう。  これはほとんど自分がやったことの結果なので、とにかく自分を反省して悪い点を改めるしかない。  世の中のことは、自分次第な面も多く、自分から「こうしたい、ああしたい」と本気で頑張れば、だいだいはその思いの通りになるものである。』

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