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『呻吟語』と『菜根譚』

『菜根譚』(湯浅邦弘著 中公新書)を読みました。  『明(みん)代の清言(せいげん・・・俗世を離れた哲学的議論)』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.(明代の)代表的な著作としてあげられるのは『呻吟語(しんぎんご)』『小窓幽記(しょうそうゆうき)』、そして『菜根譚(さいこんたん)』である。  『呻吟語』とは、明代の学者呂坤(りょこん)が30年の歳月をかけて編纂(へんさん)した人生哲学の書で、『菜根譚』と同じく万暦(ばんれき)年間(1573~1620)頃の成立である。  (『菜根譚』は明末の洪自誠(こうじせい)の著で、処世訓の最高傑作とされる。)  


2.この二つの書と『菜根譚』とを比較してみよう。

①まず類似点は、明末に成立していることである。

②また第二の共通点として、短文による格言を集めたという点もあげられる。

③そして第三は、儒教倫理の枠を越えていることである。  中国思想史の漢代以降は(それまでの儒教に)仏教・
道教の諸思想が融合し、さまざまに展開し、受容されていく。


3.それでは、こうした清言の書の中で、『菜根譚』が最もすぐれた処世の書とされるのはなぜなのであろうか。

①その理由として考えられるのは、まず『菜根譚』の持つ思想性である。  『菜根譚』は仏教・道教についても良い点を取り入れているが、儒家の徒であるという原則は、最後まで崩していない。

②第二は、その文体と表現である。  基本的に、二句あるいは三句の対構造になった文章は、暗記・誦読にも適した名文である。

③そして第三に、『菜根譚』の不思議な構成にも注目しておく必要がある。  全体を前集と後集に大別するのみで、章や見出しは一切付けていない。  『論語』や『老子』も、これといった見出し語がない。  どこから読んでも構わない。  凝縮された言葉は、かなりの解釈の幅を持つ。』



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