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和田亮介さん『扇子商法』

『扇子商法』(和田亮介著 中公文庫)を読みました。  (日本商業史を初めて集大成した)宮本又次先生の解説『扇子商法と唐傘商法』から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①「扇子商法」なる書物は、大阪で名高い和田哲株式会社創業者の和田哲夫氏の追悼録を、その第三代目の亮介社長がまとめたものだ。

②表題の「扇子商法」とはどんな不況のときでも決して潰れないような体制をととのえておくこと。  扇子は暑いときにはいっぱい開いて使うが、不用のときには小さくたたんでおく。

③経営もこれと同じで、好景気はいつまでもつづかず、必ず次には不景気がくる。  そして不況があれば必ず次には好況がくる。  そのときにはすぐに応じられるように、つねから準備しておく必要がある。

④好いときにはひろげ、悪いときにはちぢめる。  不況のとき、扇子をちぢめるのは難しいが、よいときにひろげるのは存外と楽である。

⑤つねからちぢめられるように準備しておく。  つまり余裕をもっておらねば、ちぢめられない理屈である。  攻めよりも退(ひ)き戦(いく)さのほうがなん倍もむつかしいと説く。  

⑥つねに不況にピントを合わせて「人を増やさない」「借金しない」「無駄しない」、扇子をしめておくのである。  「現金仕入れの手形販売」という商法を、戦前も戦後も押し通し、自社は一流でなくても、銀行・得意先と環境を一流でかためる。  これが「三つの安全」だとする。

⑦高度成長期にも銀行の借金で企業を伸ばすことはせず、積極策の花形だった「脱本業」などには見向きもせず、「本業一筋」に生きる。  利益や売上高の増大などは眼中になく、「企業の永遠性」こそ企業人生の生き甲斐だと説く。

⑧三井高房(三井家三代目)はその著「町人考見録」のなかで、川村瑞賢(伊勢の貧農から身を起こし江戸屈指の材木商となった)の業績をたたえて「唐傘商法」といっている。  瑞賢の言として、次のようなことを述べている。

⑨「人の心は小さく細かくあるべきであるが、事を成すに当たっては、から傘のように大きく延ばさなければ成就しない。  小さくもなるし、大きくもなる傘の在り方を味わうべきである。  世間で大気者(・・・小さなことにこだわらない者)といわれる人物は傘の広がりばかりで、小さくしめるということがないから、運よく立身しても、忽(たちま)ちにして元も子もなくしてしまうものである。」

⑩延ばしたり、縮めたりできる唐傘の商法を賞しているのである。  この「唐傘商法」は和田さんのいう「扇子商法」にあい通じているように思われる。』

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