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恐怖心

週末に読んだ二つの記事(テーマは「恐怖心」)から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.棋士・羽生善治さん・1970年生まれ(日経新聞7月3日夕刊)

①20年間、将棋界のスーパースターの座にある羽生善治さん。  今年で40歳を迎えるが、「頭脳の格闘技」で若い世代をねじ伏せ、現在も王座、名人、棋聖の三冠を併せ持つ。  「プロ同士の対局では、力が均衡しているので圧倒的な差がつくことはほとんどありません。  たいていは終盤、自分が1手指した直後に自分の玉が詰まされて負けてしまうのでは、という恐怖心に襲われることになります」

②〝最強の棋士〟も、常に自信満々で指し手を選んでいるわけではない。  「実は、年齢を重ねるほど、この恐れの気持ちが大きくなってきます。  失敗の経験を何度も重ねているからかもしれない。  経験には、いい結果と悪い結果があり、経験を積むことで選択の幅が広がることは事実ですが、迷ったり躊躇(ちゅうちょ)したりと、ネガティブな選択をしている時もあります」

③「若いうちはリスクがわからないまま指して、それがいい結果に結びつくこともあるが、年々このリスクに対する恐怖心をどう克服するかがテーマになってきます。  ただ不思議なもので、年齢に比例して打たれ強さが増し、精神的に動じなくなるという側面もあります」

④渡辺明五段(当時)を挑戦者に迎えた7年前の王座戦五番勝負の決定局で、羽生王座が駒を動かす時の手の震えが印象的だった。  「将棋というのは、最後、相手の玉を詰ましにいって、その通りにいかない時はたいてい自分の持ち駒を使い果たしているので負けになる。  詰み筋が一瞬見えても時間が足りずに確信を持てないような時、詰ましにいくかいかないかの決断が難しい。  最も緊張する瞬間で、詰ましにいこうと決断した後、はっきり勝ちが見えた時に緊張から解放されて手が震えたのだと思います」


2.今年の柔道日本一・高橋和彦さん・1985年生まれ(WEDGE7月号)

①187センチ、120キロ。  ヒゲが厳(いか)つい高橋は、その風貌にはおよそ似合わない「繊細でびびり症。  負けを引きずり落ち込んでいく性格」という自己分析をいとも簡単に、それも茶目っ気たっぷりに口にする。  一面弱さとも取れるそれは、柔道という競技性からすれば隠したくなる性格のはずではないのか?

②高橋は言う。  「怖くなって、試合に出たくないと思うことさえあります。  でもスポーツ選手にとって、怖がることは決して悪いことではありません。  自分に足りないことがあるのを知っているからなんです。  ボクはびびり症だからこそ、人よりも練習しなければ勝てません。  天賦(てんぷ)の才があるわけじゃありませんからね」

③隠すことも飾ることもない。  ましてや虚勢を張ることなど考えもしない。  だから「慢心しないための戒めでは」という質問にも、「とんでもない。  そのままの意味ですよ」とクリッとした大きな目が笑う。  ストイックな武道家や勝負師というイメージとは、少々異なるタイプの王者が誕生したようだ。』

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