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榊原英資さん『龍馬伝説の虚実』

『龍馬伝説の虚実』(榊原英資著 朝日新聞出版刊)を読みました。  『第一章 龍馬伝説は明治一六年に始まった』の中の「忘れられていた竜馬」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①明治維新の直前、1867年11月15日に坂本龍馬は暗殺されますが、維新後しばらく龍馬は忘れられた存在でした。  龍馬がはじめて注目されるのは1883年(明治16年)。  土佐の自由民権運動の新聞、土陽新聞においてです。  

②歴史家・加来耕三はその経緯を次のように記しています。  「作者は自由民権運動家で文筆家の坂崎紫瀾(しらん)であった。  (中略)  幾度か単行本としても刊行されたが、人気の高かったことから、後世の人々は、この物語をすべて、事実であるかのごとく記憶してしまった」

③背中に馬のような毛が生えていたとか、10代に寝小便の癖があったとか、寺子屋を1日で退学させられてしまったなどという話は、かなりフィクションが入っているというのです。  加来は千葉定吉道場の娘との淡い恋も、寺田屋で襲われた時、入浴していたお龍が裸のまま二階に駆け上がって知らせたというのも、皆、坂崎の創作だというのです。

④筆者を含めて多くの人たちの龍馬に対する知識は司馬遼太郎の『竜馬がゆく』に負っているところが多いのですが、この『竜馬がゆく』もフィクションの部分が多いようです。  小説なんだからいいじゃないかということでしょうが、小説がいつのまにか事実として受け入れられてしまうのが歴史小説の問題点です。

⑤そして『竜馬がゆく』のフィクションは1883年の坂崎の連載から始まったのです。  薩摩と長州の独善的政治に飽き飽きしていた人々、特に、自由民権派の人々がこのフィクションに飛びついたのです。

⑥もちろん、実在の人物ですし若干の史実もありましたから、全てが全てフィクションであったわけではありません。  しかし、現実の政治に大きな不満を抱いていた人々を喜ばせるように様々な工夫がなされていたことも事実でしょう。

⑦寝小便をしていた甘やかされて育った少年が、剣術に目覚め、次第に天下を動かすようになっていくという劇的な変化も、面白く小説を読ませるためのストーリー展開だという部分もあるのでしょう。  いずれにせよつくられた偶像でなく、龍馬の実像を知ることはそれほど簡単なことではないようです。』

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