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宮本常一『父の訓戒十ヵ条』

『超実践的「文章教室」』(福田和也著 ワニブックス新書)を読みました。  「『民族学の旅』宮本常一」の項から抜粋・紹介します。  宮本常一(1907年8月1日~1981年1月30日)は、日本を代表する民俗学者の一人です。

『この本は、山口県の貧しい農家に生まれた宮本が、いかにして民俗学の道を進んでいくかをつづった自伝ですが、至るところに「学び方」のヒントが見られます。  (中略)  この作品のなかで印象に残り、また役に立つのは、若き宮本が故郷を出るとき親父から授けられた十ヵ条の訓戒ではないでしょうか。

①汽車へ乗ったら窓から外をよく見よ、田や畑に何がうえられているか、育ちがよいかわるいか、村の家が大きいか小さいか、瓦屋根か草葺きか、そういうこともよく見ることだ。  (中略)  そういうことでその土地が富んでいるか貧しいか、よく働くところかそうでないところかよくわかる。

②村でも町でも新しくたずねていったところはかならず高いところへ上がって見よ、そして方向を知り、目立つものを見よ。  (中略)  高いところでよく見ておいたら道にまようようなことはほとんどない。

③金があったら、その土地の名物や料理はたべておくのがよい。  その土地の暮らしの高さがわかるものだ。

④時間のゆとりがあったらできるだけ歩いて見ることだ。  いろいろのことを教えられる。

⑤金というものはもうけるのはそんなにむずかしくない。  しかし使うのがむずかしい。  それだけは忘れぬように。

⑥私はおまえを思うように勉強させてやることができない。  だからおまえには何にも注文しない。  すきなようにやってくれ。  しかし身体は大切にせよ。  三十歳まではおまえを勘当したつもりでいる。  しかし三十すぎたら親のあることを思い出せ。

⑦ただし病気になったり、自分で解決のつかないようなことがあったら、郷里へ戻って来い、親はいつでも待っている。

⑧これからさきは子が親に孝行する時代ではない。  親が子に孝行する時代だ。  そうしないと世の中はよくならぬ。

⑨自分でよいと思ったことはやって見よ、それで失敗したからと言って親は責めはしない。

⑩人の見のこしたものを見るようにせよ。  その中にいつも大事なものがあるはずだ。  あせることはない。  自分のえらんだ道をしっかり歩いていくことだ。』

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