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双葉山

週末に読んだ『寄り添う』(雨宮由未子編著 講談社ビジネスパートナーズ)という本の中で双葉山に関する記述がありました。  一橋大学大学院の楠木建教授が書かれています。  楠木教授によると専門は『競争戦略論という、競争の中で商売が成功するのはなぜか、その論理を考えるという仕事をしている』のだそうです。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①「双葉の前に双葉無し、双葉の後に双葉無し」というように、双葉山定次はまさに昭和屈指の大横綱であった。  いまだに破られていない69連勝の記録は年二場所の時代、1939年に達成されている。  驚くべきことに、双葉山は足かけ4年にわたって一度も負けなかったということになる。

②若いころには、決め手に欠けるため、土俵に追いつめられることが多かった。  足腰の強さを頼りに土俵際ぎりぎりのところで逆転するので「うっちゃり双葉」と皮肉られた。

③非力と称されることもあった。  有名な決まり手の左上手投げにしても、いかなる相手でもどんな体勢にあっても投げ飛ばしてしまえるほどのものでもなかった。  あっという間に相手を土俵の外に運ぶスピードもなかった。  それでも双葉山は勝ち続けた。

④「双葉山はいつも相手より少しだけ強い」といわれていた。  どちらかというと受けて立つ取り口であったので、立ちあい直後は相手が有利にみえる相撲が少なくなかった。  しかし、相手は次第に双葉山に追いつめられ、土俵を割るか投げ飛ばされてしまう。

⑤ここに双葉山の強さの本質がある。  一撃で相手を倒す必殺技や飛び道具はない。  その点で、後年の横綱、輪島大士とは対照的だ。  輪島は右手の引きが猛烈に強く、強引に相手を仕留める左下手投げは「黄金の左」と賞賛された。

⑥輪島が「必殺技系」の横綱だとしたら、双葉山はトータリティの横綱である。  自分の重心を巧みに移動させ、相手の体勢が自ずと崩れるように仕向ける。  勢い込んで攻めてくるまさにそのときに、相手は双葉山の術中にはまる。  取り口や勝負運びも含めたトータルとしての相撲のあり方で双葉山は傑出していた。

⑦だから相手は打つ手がない。  必殺技系の力士であれば、その必殺技を封じるのが勝負のカギとなることは素人でもわかる。

⑧双葉山が勝ち続けた間、あらゆる力士が双葉山の取り口を研究した。  しかし、誰もその強さの正体を突きとめられなかった。  強いということは一目瞭然だが、なぜ強いのかは誰にもわからない。  だから双葉山は強かった。』

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