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リミッター

1.『修行論』(内田樹著 光文社新書)を読みました。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①たしかに人間は、ぎりぎりまで追い詰められると、どこかで「リミッター」が切れて、「こんなことが自分にできるとは思わなかった」爆発的な身体能力のブレークスルーを経験することがある。  これは長距離走における「セカンド・ウィンド」と呼ばれる現象に似ている。

②もう限界だ、これ以上一歩も足が進まないというところまで追い詰められたときに、ふいに「背中を押す風」が吹き、筋肉疲労が消え、足が軽くなることがある。

③むろんこれは脳内麻薬物質の効果にすぎない。  筋肉の苦痛とは、「もうこれ以上身体に負荷をかけない方が、生物学的には、望ましい」という、身体からの警告である。

④そのアラームが消えるのは、「いくらアラームを鳴らしても、この人間は筋肉に負荷をかけることを止めない。  それはおそらく、一時的に健康を害しても、成し遂げなければならない緊急性の高い仕事を今しているからだろう」と身体が判断して、最初の判断を撤回するからである。

⑤肉食獣に追われているようなときには、「そんなに走ると健康に悪い」という判断で、走行にリミッターがかかったら、追いつかれて死んでしまう。  そのほうが健康に悪い。  

⑥「より健康に悪いことを回避するという緊急避難装置としてなら、人間は一時的にはかなり健康に悪いことができる」。  これは生物としては合理的な機制である。

⑦ある種の競技やスポーツで行われている「つよい負荷をかける練習法」は、この機制を利用したものである。  青筋を立てて怒声を張り上げる監督やコーチは、象徴的には「肉食獣」である。  彼に捕食されないために、選手たちは必死で「健康に悪いこと」をする。』


2.マラソンにおけるリミッターについて、7月26日の日経新聞に認知神経生物学が専門の泰羅雅登(たいらまさと)教授への取材記事が掲載されていたので、抜粋し番号を付けて紹介します。  ※「」の中が泰羅教授の発言部分です。 

『①「総司令部である脳は末端の状態をみていて、ここが危ないと思ったらストップをかけるのが基本戦略。  脳を擬人化して語るのは好きではないが、脳は体が死んだら『自分』も死んでしまうと考えているので、無理をする前にランナーを止めようとする」

②水分の枯渇など体に問題が生じると本物のリミッターが働く。  「しかし、脳が偽物の痛みをつくり出してリミッターを掛けることもあるような気がする」

③少し話がずれるが、実は脳の中には痛みを抑えるシステムが存在する。  たとえば、兵士が戦場で深い傷を負っても痛みを感じないことがある。  兵士を戦場から生還させるため、つまり個体を守るために脳がリミッタ-を外すのだという。  俗にいう『火事場のバカ力』とはこのことだ。

④「昔からいわれているように、つらいときでも笑いをつくれば楽しくなる。  だから、走っているときは、つらくても笑顔をつくったほうがいい」  苦境が訪れても、意識的に笑顔を保つことで脳に『まだ大丈夫』と思い込ませることができるかもしれない。  このへんはランナーと脳との駆け引きになる。』


明日から山中湖で夏季合宿です。  参加される方は安心してください。  合宿中、皆さんを追い詰める「肉食獣」はいません(笑)。  楽しく稽古しましょう。

合宿が終わると、11日(日)まで道場は夏季休暇で休館となります。

その間、全日本大会の出場選手たちは、長野県・蓼科で高地トレーニングだそうです。  そこには「肉食獣」がいるかも(笑)。  詳しくは先月末に発売された『ワールド空手』9月号をご覧になってください。

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