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叱る力

『叱る力』(坂田信弘著 双葉新書)を読みました。  プロゴルファー・作家の坂田さんは『坂田塾』を主宰し、古閑美保さんをはじめとする多数のプロゴルファーを輩出しています。  『坂田塾 7つの決まりごと』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①平成6年、開塾2年目の夏だった。  私は熊本塾生を連れて、長崎空港CC(カントリークラブ)にて一週間の合宿を行った。  (中略)  2日目の朝、私は小学6年生を2人、熊本へ送り返した。

②合宿は、朝6時の集合に始まる。  これは毎日の決まりだった。  (中略)  6時集合ということは5時50分に集まらなきゃいかん。  どんなに遅くても55分までに約束の場所に集まることを教えた。  しかし、2人が約束の時間に来なかった。

③6時02分、正確には1分30秒。  2人はロビーに駆け込んできた。  1人は現在プロになり、もう1人は腰を痛めてゴルフを辞め、今はアメリカへ渡った。  

④朝6時のクラブハウスのロビーに人影はない。  そのロビー、集まった塾生の前で、私は履いていた運動靴を脱ぎ、それで2人の頭を殴った。  

⑤熊本まで、私は小学6年生の女子2人に帰れと命じたのだ。  2人は泣いた。  私は2人を許さなかった。

⑥そして、私は他の塾生達を怒鳴り上げた。  1人の責任はみんなの責任である。  「みんな起きたか?」と声を掛け合うことができんのか。  「自分だけ時間に間に合えばいいと部屋を飛び出す。  そんなことが許されるのか?」と。

⑦手を差し伸べられることがあれば、差し伸べる。  自分だけ満腹で、他の子が飢えていたら、自分の満腹度を削ってでも、飢えた子に食べ物を与えなきゃいけない。  1人の幸せとは、みんなの幸せを求めることだ。  「そのための旅じゃないか。  なのに、お前たち、自分のことしか考えちゃいない」と怒った。

⑧そして、キャプテンに向かって、「私はみんなの出てくる時間をチェックしていた。  ならばお前も5時半に起きてみんなの部屋を回り『もう出たか?』と確認せにゃならんのじゃないか」と怒鳴りつけ、殴った。

⑨鉄は熱いうちに打てというが、それ以来、坂田塾では時間にいい加減な者は一人もいなくなった。  (中略)  たかが1分30秒。  あくび3回の時間、窓の外を眺めていれば、あっという間に過ぎ行く時間だ。  だけど私は2人を帰した。

⑩2人は号泣していた。  その姿、今でも忘れられん。  目がしょぼついてくる。  でも、ここで妥協したら、塾も2人も終わると思った。  私は妥協しなかった。

⑪学校でそんなことをしたら大変だと思う。  (中略)  しかしこの塾は、私の私塾だ。  態度で教える、行為で教える。  必死さを教えて行く。  教育には、戦いの領域はあると思う。

⑫塾生はコースラウンドに出た。  2人はロビーの片隅に座って泣き続けた。  2時間後、2人に母親が迎えに来た。  母と子、玄関で泣いた。  そして、母の運転で帰っていった。

⑬時が過ぎて紫垣綾花はプロになり、青木小枝はアメリカで過ごしている。  私は2人の成功を願う。  長崎空港CCの朝は必死の朝であった。  坂田塾はあの時から始まった、と思っている。』

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