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白鵬のメンタル

横綱・白鵬が大相撲に入門して以来のメンタルトレーナーである内藤堅志さんが書かれた『白鵬のメンタル』(講談社+α新書)を読みました。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①白鵬はご存じのように、押しも押されもされぬ平成の大横綱です。  当然のことながら「メンタルは強い」と思っている人が多いと思いますが、彼のこれまでの言動を検証していくと、そうとはいえない面も多々見られます。  (中略)  白鵬との過去の会話記録を確認していっても、偉大で強い横綱であるからか、かえって弱気の発言が目についてしまいます。  

②2006年三月場所で大関昇進をつかみますが、この時期の会話記録を見ていくと、「心臓が痛い」「眠れない」といった言葉が目につきます。

③たとえば、同場所八日目の朝稽古が終わり、岩崎さん(宮城野部屋マネージャー)の運転する車で宿舎に向かう途中、こんな不安を口にしています。  

白鵬・・・昨日、四時まで眠れなかった。  相撲のことを考えると眠れない。  テレビを見ていて眠たくなり、ようやく眠った。

親方(現・宮城野親方)・・・そういうこともある。  横綱、大関もそういう経験があるのだから、どうってことない、どんどん行くだけだよ。

白鵬・・・(胸を押さえながら)心臓が痛い。

岩崎・・・いつからそんなに弱くなったんだ。

白鵬・・・(しばらく無言)・・・。

親方・・・そんなことじゃダメだ。  心臓に毛が生えてくるようでなくては。

④もちろん、こうした挫折や不安を抱えながらも、それを乗り越え、白鵬は平成の大横綱へと成長していきます。  つまり、不安にさいなまれ、挫折感を味わい、周囲に「弱い自分」をさらけだしているにもかかわらず、結果は残している。  逆説的な言い方になりますが、そこに白鵬の「強さ」の秘密が隠されているということです。

⑤不安にさいなまれ、自分の弱さが出るということは、言い換えれば、「つねに解決しなければならない課題が出てくる」ということです。

⑥その点では誰もが同じ、つまり「誰もが弱い心を持っている=解決しなければならない課題を抱えている」わけですが、現実にはそれをうまく乗り越えられる人と、乗り越えられない人がいる。  そう考えれば、求められるのは「強い心」ではなく「問題解決能力」といえるかもしれません。

⑦「強い心」という言い方では漠然としていて、受け止め方は十人十色。  人によっては「弱い心を克服しなければ強い心になれない」と思っているかもしれませんが、白鵬の場合、横綱になってからも「強い心」と「弱い心」がずっと同居しています。

⑧「弱い心」を持ったまま、ただ問題を解決する力がついてきた。  結果として、この力が白鵬のメンタルを強くしてきた。  そのように考えたほうが、つじつまが合うように思えます。

⑨「弱い心」はなくさなくていい。  否定せず、むしろ共存することを意識する。  そのために、何が不安なのか、何が問題なのかを素直に考える。・・・じつはこれは、ストレスへの対処法を意味する「ストレスコーピング」のうちの、「問題焦点型コーピング(・・・ストレの原因そのものに働きかけて、それ自体を変化させて解決を図ろうとすること)」に当たるものです。  白鵬は、天性の素質に加え、こうしたコーピング力にたけていたといえるのです。

⑩つまり、彼は強くなろうとして精進してきましたが、それは弱さを否定し強い自分になろうとするものではなく、弱さ(不安、恐怖)を真摯に受け止め、目の前の現実に対処する力を自分なりに身につけてきたプロセスだったということ。

⑪ですから、弱音も吐くし、つらいことがあったら心も揺れる。  ときには、声を荒げることもある。  そうした感情も人並みに、いや、人並み以上に持っているのです。』

今夜は、下高井戸道場の指導をしてくれていた角倉剛(元・東大同好会)がシンガポールに転勤になったので、一杯やります。  明日・日曜日は審査会で、木曜日から煙台・天津です。    

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