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十字路が見える

1.菊澤院長を通じて北方謙三先生から『十字路が見える』(新潮社)を私宛のサイン入りで頂きました。  『空の上にも遭遇はある』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①ミルウォーキーからロスへむかう機内だ。  (中略)  その大男は、ゆっくりと壁に手をついて入ってきた。  黒いスーツ。  白いシャツ。  挙措は落ち着いていて、静かだった。  私は圧倒され、口を開いていただろうと思う。

②その男は、私の前の列の席に腰を降ろした。  斜め後ろの私の席からは、肩や横顔の一部が見えた。  威風あたりを払うという感じではなく、存在感だけが静かで、しかも強烈だった。

③(同行の)隣のレーサーは、日本で最も高名な実業家の孫で、闊達な男だった。  サインしてくれ、なんて言えないよな。  囁くと、レーサーは大きくかぶりを振った。

④着陸すると、乗員に声をかけられ、彼はゆっくりと立ちあがった。  最初に出て行った。  次が私たちで、機外に出たところから黄色いランプをくるくる回した、介助用のカートに彼が乗るのが見えた。

⑤モハメッド・アリである。

⑥不思議なことだが、私は機内でボクシングのことは一度も思い浮かべなかった。  キンシャサの試合でさえも。

⑦戦いを終えた男の背中を、ただ見ていたという気がする。』


2.モハメッド・アリの部分の前段からも抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①本物ですよね、と訊かれたことが、私ごときにもかなりの数ある。  (中略)  

②電車に乗っていた。  久しぶりの電車で、私は緊張して吊り革につかまっていた。  ある駅で、どかどかと高校生が十数人乗り込んできた。  私の方を見ている。

③私は、青年誌で人生相談のコーナーを持っていたころで、結構人気があった。

④わかっちまったかと思った瞬間、あのオヤジ、北方謙三の真似してるぞ、と聞こえよがしに言うのである。

⑤私はむっとして、本物だぞ、と睨みつけた。 

⑥あ、真似した真似した。  高校生たちには、大受けに受けた。  私はひどく傷ついてうつむいた。』

きょうはテレビでフロイド・メイウェザーの最終戦(?)と大相撲です。

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