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はらわた力

ドン・キホーテの安田隆夫創業会長が書かれた『安売り王一代』(文春新書)を読みました。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①ドン・キホーテの社内では「はらわた」という言葉が一般用語化している。  それがそのまま社内広報のタイトルにもなっているほどだ。  営業現場でも、「もっと『はらわた力』を磨け!」とか、「お前はまだ『はらわた』ができ上がっていない」などといった会話が、日常的に飛び交っている。

②この「はらわた」とは、私の生きざまと壮絶な体験を通じて、文字通り腹の底から湧き出てきた言葉だ。  (中略)  漢字で書けば「腸」となるだろう。  「腸(はらわた)」は「肝(きも)」とは違う。  たとえば「肝っ玉がすわっている」と言えば、物ごとに動じない堂々たる様だが、「はらわた」はそんなに立派なものじゃない。  未完成で泥臭く、およそスマートなイメージとは対極にある。

③しかしこの「はらわた」力の有無が、土壇場に追い詰められた人の明暗を決する。  周りがすべて討ち死にしても、一人だけ生き残る強運を、「はらわた」はもたらしてくれる。  私の言う「はらわた」とは、もがき苦しむ力であり、紆余曲折しながら最後に這い上がろうとする一念だ。

④川の濁流にのまれても、なりふり構わず土手にしがみつき、藁を掴んでも懸命に流されまいとする精神力である。  土俵際に押し込まれても、ギリギリで俵を割らずに耐えに耐え、切り返してうっちゃりを仕掛けようとするしぶとさだ。

⑤私は人生でも仕事でも、「もうダメだ」と進退きわまる局面に幾度となく陥った。  そんな時、いつも内から不思議な力が湧いてくる。  そして何らかの活路を見出し、どうにかこうにか浮かび上がる・・・・・・今もその繰り返しだ。

⑥それを支えるものとして、信念とか志、いわんや不撓不屈などという立派な言葉や理屈では、どうしても説明することができない。  少なくとも実戦派の私には、「はらわた」という表現しか思い浮かばないのである。

⑦人生も仕事も経営も、きれいごとばかりではない。  高邁な理想を語る前に、まずは目前にある現実との格闘が待ち受けている。

⑧だからこそ、「はらわた」を据え、常に粘り強く戦い続けなければならない。  繰り返すが、格闘における最大の武器は「はらわた」である。  そして「はらわた」の核を形成するのは、「何が何でもこうありたい」という自己実現の強烈な思いと執念、ひたむきさにほかならない。

⑨逆に独自の「はらわた」さえでき上れば、今のような時代の激変期には、驚くほど効率的に成功の階段を駆け上がることができる。  資本も人脈も経験もいらない。  だから私の中では、「はらわた」は人がのし上がっていく上での最大・最強のキーワードだ。』

安田会長は私が以前経営していた会社の株主の一人でした。  何度かお目にかかりましたが、明晰さとファイティングスピリットには常に感銘を受けていました。

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