恩人を大切にする

『1万人の人生を見たベテラン弁護士が教える「運のよくなる生き方」』(西中務著 東洋経済新報社)を読みました。  「恩人を大切にする」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①大阪に十川(とがわ)ゴム製造所という会社がありました。  日本のゴムホースのトップメーカーなのですが、この会社の創設者である十川栄さんにはこんなエピソードがあるそうです。

②青年時代、十川さんはゴム製品を販売する小さな店に勤めていました。  (中略)  ところが、ある日、十川さんの勤める店は突然、倒産します。  倒産すると、債権者が押し掛け、店の物から主人の家財道具まで差し押さえていきます。  その様子を見ながら、店の従業員たちは当然のことながら、次々と店を出ていきました。  ところが、出ていく同僚たちをしり目に、十川さんは店に残ったのです。  真面目で信用されていた十川さんは、他の店や会社から高給で誘われていたのですが、それを断った。

③「私は給料の額で自分の行く道を決めない。  これまでお世話になったご主人を見捨てるようなことはできない」  理由を聞かれて、こう答えたそうです。  そして、店のご主人の家財道具が競売にかけられた日、十川さんは自分の(コツコツと貯めてきた)貯金を全部下ろしてそれを買い取り、ご主人に渡しました。  

④ご主人を助けた後、ようやく独立したのですが、そのときには十川さんの人柄を見込んで彼の事業を援助しようと申し出る人が何人も出て、会社はたちまち発展します。  さらに、十川さんは、会社が成長すると元のご主人を工場長に迎えました。  そのうえ、ご主人がなくなると遺族の世話まで見たのです。

⑤「なぜ、そこまでするんですか」と尋ねられたとき、十川さんは「ご主人は恩人だからです。  ご主人が仕事を教えてくれたから、私は今の道へ進めたのですから」と答えたそうです。  これほどまで、恩人を大切にしたからこそ、十川さんは社会的信用を得られたわけです。

⑥有名な経営学者、ドラッカー氏は言っています。  「経営者が身につけていなければならない資質とは、天才的な才能ではなく、品性だ」  品性とは人徳のことです。  恩人を忘れない人徳の高さが、運を導く。  私たちも十川さんにならい、人徳を磨きたいものです。』

「元のご主人を工場長に迎え、最終的には遺族の世話まで見る」なんて、中々できることではありませんね。  感動しました。

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書く力

1.ジャーナリストの池上彰さんと読売新聞『編集手帳』執筆者の竹内政明さんの対談集『書く力』を読みました。  『名文を「書き写す」意味』の項から抜粋して紹介します。

『池上・・・竹内さんは、昔から、いい文章を見つけては、それを書き写してきたとお聞きしました。

竹内・・・いまも続けています。  二日に一度くらいのペースで、『井上靖全詩集』に収録されている『北国』という詩集の一部分をノートに書き写しています。  (中略)  この『北国』に関しては、頭からお尻まで30回くらいは書き写したと思いますね。  少しずつでいいんです。  ただ、ずっと続けることと、同じところを何度も書き写すことが大事なんだろうと思って取り組んでいます。

池上・・・スポーツ選手のトレーニングと、考え方が似ていますね。  王貞治選手やイチロー選手はホームラン王になっても、首位打者になっても、練習を欠かさない。  「文章を書く」ということも、同じですよね。  うまくなりたいのであれば、練習を続けるしかない。

竹内・・・王さんと比べられると困ってしまうのですが、同じ文章を繰り返し書き写せば書き写すほど、「いい発見」が出てくるんですね。  読むだけなら、すっ飛ばしても読めないことはありませんが、書き写すとなると、一字一句追っていくことになる。  まずこれが文章修練には効きますね。  名文を一字一句追ってみると、自分がいかに手抜きをして書いていたかを思い知らされる。』

私も毎回のブログで、備忘録的に書籍の一部を書き写しています。  2007年9月3日が第一回なので、もう少しで10年です。  少しは『書く力』がアップしたかな~(笑)


2.次の文章は、(本書で紹介されている)読売新聞2016年5月3日『編集手帳』からの抜粋です。

『国文学者の池田弥三郎さんに、夫人と一緒に東北の旅館に泊まった折の思い出話がある。  散歩に出る時、番頭さんが「じいさん、ばあさん、お出かけ」と大声で呼ばわった。  戻ると今度は、「じいさん、ばあさん、お帰り」。

一度はともかく、二度は勘弁ならぬ。  キミ、僕たちは確かに若くはないが、もっとほかに言い方があるんじゃないか!  問いただしたところ、〝じいさん、ばあさん〟は夫妻の部屋番号「十三番さん」であったという。』

なるほど(笑)

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道徳心

『あなたの人生の意味』(デイヴィッド・ブルックス 早川書房)を読みました。  1月22日のブログで「道徳」について取り上げましたが、本書でも「道徳心」が大きなテーマとなっています。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.①私は最近よく考えることがある。  人間の美徳には大きく分けて二つの種類があるのではないかということだ。  (中略)  私が二種類の美徳について考える上で助けになったのは、ジョセフ・ソロヴェイチックというユダヤ教の指導者が1965年に書いた『孤独な信仰の人』という本だ。  ソロヴェイチックによれば、私たち人間の本性には二つの対立する側面があるという。  

②それぞれを彼は、「アダムⅠ(ワン)」、「アダムⅡ(ツー)」と名づけた。  アダムⅠは私たちの中のキャリア志向で、野心的な面で、高い地位と勝利を求める。  アダムⅡは心の内に何らかの道徳的資質を持とうとし、善き行いをするだけでなく、善き存在であることも求める。

③私たちは今、アダムⅠばかりが優先され、アダムⅡが忘れられがちな社会に生きている。  成功をおさめ、称賛を得るための競争はあまりに熾烈なため、私たちはそれで消耗し尽くされてしまう。

④どこかで、自分は他人から認められること、褒められることばかりをしてきたのだと気づく。  愚かにも、他人を、その人の持つ価値ではなく、能力で見てしまっている。  自分の人格をどのようにして高めていくかという計画もない。  それがないと、内面の人生はもちろん、外から見た人生もいずれ、崩壊しかねない。

⑤正直に言おう。  私はこの本を、自分の心を救うために書いた。

2.①(前略)このように生きている人たちは、人間は生まれたままで、何もしなくても素晴らしい存在だなどとは考えていない。  明確に意識して努力を重ねない限り、良い人間にはなれないと自覚しているのだ。

②また、たとえ表面的に成功しているように見えても、内面の道徳的な向上がなければ、その成功が長続きしないことも知っている。  内面が道徳的に充実していないと、いずれ不祥事や、誰かの裏切りによって転落してしまう。  「アダムⅠ」は、結局は「アダムⅡ」に依存している。

3.①この何十年間かの間に私たちは、かっては持っていた道徳観を失い、かってはごく普通だった生き方も失った。  今の人間が過去に比べて極端にわがままになったわけでも、強欲になったわけでもないと思うが、一定の規範が失われたことで、自分の人格をどう形成すればいいのかはわかりにくくなったと思う。

②現代社会の大きな間違いは、「アダムⅠ」さえ成功すれば、人間は心から満足できると多くの人が信じていることだ。  アダムⅠの欲望は無限である。  何かを手に入れてもすぐに物足りなくなり、絶えず「もっと欲しい」と思い続ける。  アダムⅡを成長させない限り、本当の満足を得ることはできない。

4.①(ノーベル平和賞の)シュバイツァーは、理想主義者を(アフリカのジャングルの)病院職員として雇うことはなかった。  また、自分は世界に大きな貢献をしているのだとはっきり自覚して働くような人も雇わなかった。

②彼が雇いたかったのは「どんな時も常に同じように真面目に働く人、ただ自分に求められたことを淡々とこなす人。  『して当たり前』という気持ちで仕事をする人。  決して普通でない際立ったことをしようとは思っていない人である。  英雄になるつもりはなく、与えられた仕事を冷静に、しかし熱心にこなす。  そういう人だけが、世界を変えるような偉大な業績をあげることができる。」 

5.①人が未来のことを思う時には、幸せに生きている自分の姿を思い描くのが常である。  ところが面白いのは、人が過去を振り返って何が今の自分を作ったのかを考える時に思い出すのは、たいていは何か辛い出来事である。

②幸せな出来事を思い出す人は少ない。  大切なのは苦しみだったとわかることが多いのだ。  大半の人が幸せを目指していながら、苦しみによって育てられる。  そう感じる人が多い。

6.①(第二次世界大戦中の陸軍参謀総長)マーシャルが当時住んでいた軍の世界は違った。  その世界では、偉大な人間とは生まれるのではなく、作られるものだと信じられていた。  最終的に変えなくてはならないのは人間の内面だが、そのためにはまず、目に見えるところを変化させる必要があるとも考えられていた。  自分を律することができる人間になるには、日頃からそのための訓練をしなくてはならない。  

②真に礼儀正しい人になるには、まず表面的にでも礼儀正しい態度をとる訓練が必要だ。  真の勇気を身につけるには、まず自分の恐怖心に逆らって動く訓練をする。  真に沈着冷静な人間になるには、まず顔の表情だけでも常に変わらないよう訓練する。  最初に具体的な行動があって、はじめて内面が変わるのだ。

7.①マーシャルは現代の私たちとは大きく違う、組織優先の考え方を持つ人だった。  これは歴史というものを強く意識する考え方である。

②人生は誰もいない、何もない野原を歩いて行くのとは違う。  私たちは必ずいずれかの組織に属することになり、その組織に自分の身をある程度、預けることになる。  属する組織のほとんどは、私たちが生まれる前から大地に根を下ろすように存在しており、私たちが死んだあともおそらく長く変わらずに存在し続ける。

③どの組織も、すでに亡くなった人たちからの贈り物を受け取っている。  そして、組織に属した人たちは、それを存続させ、改善していく責任を負う。  より良い状態にして次の世代へと渡す責任があるのだ。  組織には必ず、昔から決まっている規則があり、属する人たちが果すべき義務がある。  また、何を良しとして、何を良しとしないかという基準もある。

8.①(現代の私たちは)「どうすれば人の上に立てるか」を教えられることはあっても、どういう仕事をし、どう生きるのが、道徳的に最も良いのかなど誰も教えない。  人は皆、ただひたすら人の称賛を求める機械のようになっている。  自分の人生の価値を、他人に褒められるかどうかでしか判断できなくなっている。

②こういう文化には大きな問題がある。  持てる能力を発揮することは大いに奨励されるが、その反面、道徳心を磨くことを勧める人は皆無に近くなってしまうのだ。  自分の人生をどの方向に進めれば意味のあるものにできるか、それを判断するには、どうしても道徳心を磨く必要があるはずだが、そのことはほとんど誰も言わない。』

私のブログのタイトルは『私の備忘録』です。  今回は書き写し、残しておきたい部分が多く、長文になりました。

ビル・ゲイツさんが「2015年に読んだ本ベスト6」のうちの筆頭に選んだことでも話題になりました。  私も「座右の書」として身近に置いておくつもりです。
    
今日の午後、西東京都大会が開催されます。  極真空手においては、日々の稽古や審査会・試合を通して「道徳心を磨く」ことも、重要な課題の一つです。

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